磁波エレキは合世色弥と共に街の中を駆ける。


「色弥さん、北区を占領することで何が起こるの?」


少年はフッと頭に現れた疑問を青年に訊ねた。
前に説明をしてくれたような気がするが、確認することも大事だろう。


「北区は五区全体の様々なライフライン、セキュリティを管理している。」

「つまり、北区を抑えれば町中が混乱するってことですか?」


エレキの出した答えに色弥は頷く。
記憶をたどり、水道局や発電所も全て北区にあることを思い出す。

ここを占領されると町が混乱することは確実で危険だ。


「大丈夫、皆でなら上手く行きますよ。」

「…ああ。」


エレキは自信満々な顔で言う。
色弥は少年に少し勇気を分けて貰い、気持ちが軽くなる。


「そうそう、チームワークは大事だ。」


空から人が勢いよく降ってきた。
着地時、地面に亀裂が入り捲り上がる。
そんなに範囲は広くない。

黒川赤次。
彼は無傷で帰ってきた。


「《烏》は心のない脱け殻って聞いたからさ、挑発も効かないだろうって思ったのに。」

「闘い以外は本当に弱いですよね、頭のほうは。」

「…言ってくれるねぇ、色弥くん。」


一瞬の沈黙はあったが、赤次は頭が悪いことを自覚しているので怒ることはない。

エレキは色弥の率直な感想にゾッとさせられた。


「北区の住民は昨日から避難しているらしい。ん?エレキ、どうした?」


エレキは赤次の後ろを見ている。
複数の白い影が視界に入る。
《烏》だ。
赤次を追っていた奴かは判別できない。
顔は白い布で見えないのである。


「よし、色弥。派手な技を使って蹴散らせ。」

「はあ!?」

「ほらほら、遠慮せずに。」

「……分かりました。」


黒川赤次という存在に半ば闘うことを強制された色弥であった。