《完》オフィスに鍵をかけて 〜キケンな部下と秘密の恋〜

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「……ってわけでだいたい
月1回のペースで新作を
発表してるから、仕事の
流れはパターン化してるわ。


デザイナーチームが、まず
大量にデザインを用意する。

あたし達商品企画はそれを
吟味して、実際に発売する
までの計画を立てるのが仕事よ」





――二人きりのB会議室で。




とりあえずあたしは
マジメに、柳瀬クンに
仕事の流れをレクチャーしてた。



_柳瀬クンはいたって普通に
話に集中して、『ハイ』
とか『へぇー』とか言い
ながら、聞いてくれてる。




正直やってみると意外に
講師がつとまってて、
自分でもちょっとビックリ
してたりして。



まぁ、ダテに5年も働いて
ないってことかな。




そんなこんなでマンツー
マンでレクチャーを
続けて、ふと気づくと
もうお昼だった。



_「あ、もう休憩かぁ。

――よし。今日は勉強は
ここまでにしよっか。

そんで午後からは、
オフィスの方に行ってみよ」




座って勉強ばっかしてても
多分ピンとは来ないもんね。

それに、疲れちゃうし。




資料を片付けながらそう
話すあたしに、柳瀬クンは
しっかりと頭を下げて、



「ハイ。

どうもありがとうございました」



って、礼儀正しくお礼を
言ってくれる。



_「――――/////」




なんかさっきから、こんな
カッコイイ子に丁寧な挨拶
連発されて、正直照れるな。




しかも見た感じチャラそう
だから、意外さもあって
よけいに戸惑っちゃう。




「い、いいよそんな
お礼なんて////」




ドギマギしながら言うと、
柳瀬クンは『え?』って
顔をして、




「でも、オレの講師して
くれたわけだから。

やっぱ、『ありがとう』
でしょ?」



_「ま、まぁそうなんだけどさ。

でもホラ、あんま
かしこまらなくても。

うちって、けっこう
フレンドリーな会社だから」




「え、オレ、そんなかしこ
まってる感じします?」




マジメな顔で聞き返され
ちゃったんで、あたしは
さらにあわててフォロー
するように、




「いや、えっと、別に悪い
ことじゃないんだけどね

その――とにかく言いた
かったのは、必要以上に
気をつかわなくていいよ、
ってこと」



_なんとかそうまとめると、
柳瀬クンは一瞬キョトンと
した顔をしたけど、すぐに
それを笑顔に変えた。




「わかりました。

オレの方こそすいません。

オレ、前職がわりと体育会
系だったんで、たぶんその
ノリがしみついちゃってん
ですよね」




「あ、そうなんだ……」




それはちょっと意外な
発言だった。



_体育会系って言ったら、
やっぱ肉体労働とか?




こんなにイケメンで
キレイ系で、全然そーゆー
イメージじゃないのに。




ちょっと、
『何してたの?』なんて
聞いてみたくなったけど――

さすがに会って数時間で
突っ込み過ぎかなって
思って、やめといた。




代わりに曖昧にほほ笑んで、



「若いのに礼儀正しくって
スゴイね。

まぁ部長にはそのままが
いいかもだけど、あたし
とかにはもっと普通でいいよ」



_すると、柳瀬クンは照れた
ように笑って、




「別にスゴクはないですよ。

てゆーか“若いのに”って――

松嶋センパイとたいして
変わんないんじゃ?」




「えっ!!?」




おっと。


まさか歳の話になだれ
込んじゃうとは……なんか
逆にあたしが突っ込まれ
ちゃってんじゃん。




しかも“変わんない”
って、一体あたしのこと
いくつだと思ってんだろ??



_「変わんない……ことは
ないでしょ。

あたし、新人で入ってくる
ような歳じゃないもん」




「イヤ、オレだって中途だし。

んじゃ、いくつなんですか?」




「えええっ!?////」




ス、ストレートだなぁ(汗)



そーゆーキャラなのかしら。




「25だけど……」




ちょっと迷ったけど、隠す
のも歳を気にしすぎてる
みたいで嫌だし、正直に答える。



_「そっか。オレは22です。

松嶋センパイ、25には
見えないですね。

同い年くらいかと思ってた」




「そ、そう? ありがと……」




どこまで本心かわかんない
けど、とりあえず若いって
言ってくれたわけだし
お礼言っとく。




にしても22――3歳年下か。


やっぱ若いんじゃん。



3歳差とはいえ、まだ
大学生でもOKな男の22歳と
OL5年目の女の25歳じゃ、
けっこうその差は大きい。



_そんなことを考えてたら、
すっかりオバサンくさい
自分の発想にむなしく
なってきた。




あたしはそれ以上考える
のをやめて、気を取り直す
ように声を張り上げる。




「――とにかく、休憩にしよ!

お昼は持って来た?」




「イエ、ぜんぜん」




「そっか。

あたしはお弁当だから中で
食べるんだけど……」



_「あ、そんじゃオレも
なんか買って来ます」




柳瀬クンはニコッと笑って
立ち上がった。




「そう?

それじゃ、あたし達の
オフィスわかる?」




「わかりますよ。

朝、宇佐美課長が教えて
くれたんで」




そうして、あたし達は
オフィスでまた合流する
ことにして別れた。




先に会議室を出てった彼を
見送って一人になると、
自然と長い息がもれる。



_「……な、なんか疲れた……」




緊張がとけたせいか、
なんかイッキに疲労が
押し寄せてきた感じだわ。




研修なんて慣れない上に、
生徒はあんなイケメン君
なんだもんなぁ。




これは、いろんな意味で
これから先が思いやら
れるぞ……。





     ☆☆☆☆☆



_     ☆☆☆☆☆



数分後の我が《ストロ
ベリーガールズ》の
オフィスは、ハッキリ
言って騒然となってた。




理由はもちろん、事前に
なんの報告もなかった
新人の登場、なんだけど。




ここまで騒然となるのは
説明するまでもなく、その
新人が若くて超イケメンな
男のコだからだ。




「マジビックリしたぁ!

まさかうちの部に男の人が
入ってくるなんてぇ〜」



_「ホンット!

決まってたんなら課長も
昨日教えてくれたらいい
のにね!!」




「で、柳瀬クンはどーゆー
仕事するんですかぁ?

なんか新しいことやるの!?」




後輩達が女子高生みたいな
ハイテンションで質問
攻めにしてて、柳瀬クンは
ろくにご飯も食べれてない。




さすがにかわいそうに
なって後輩を注意しよう
かと思ったら、それより
一瞬先に彼女達に声がかかった。



_「ちょっとみんな、
うかれるのはわかるけど
いい加減にしな。

柳瀬クン、困ってるでしょ」




苦笑混じりにさとす声の
主は、チーフの沙織さん。




やっぱ沙織さんはこういう
ときも大人だな。




いいお姉さん分である
彼女に言われると、みんな
素直に『はぁい、すいま
せーん』って謝る。




そして、今度は幾分
落ち着いたテンションで、




「けど、いいなぁ莉央さん。

これから1ヶ月もこーんな
新人さんの教育係なんだぁ」



_「え!? 

い、いいなぁってなんでよ!?」




あたし、別にやりたくって
やるわけじゃないンだけど!?




「えー、いいじゃないですかー。

女ばっかの部署に配属
された、いわばオアシスを
独り占め♪」




「ウンウン。

あたしが莉央さんと同期
だったら、部長にあたしが
やる! って言っちゃうかもー」




「はあっ!? 
あんたら何言って……」



_まったく、ヒトゴトだと
思って好き勝手言っちゃって。


こっちは代わってもらえる
なら代わって欲しいってーの!





けど、さすがに本人の
手前そこまでは言えないんで、




「いいとかよくないの
問題じゃないでしょ!

仕事なんだから!」




ちょっとキツい口調でそう
言って、後輩達をあしら
おうとする。



_だけど後輩も簡単には
引き下がらず、




「そりゃー仕事だけどぉ。

でも二人っきりで研修
してるうちに親密になって……

気づくといつの間にか――
みたいなっ!?」




言った直後後輩はキャーッ
と叫んで、隣の同僚と手を
握りあって『ヤダー!』
とか騒ぎ出した。




「バッ、バカ!!
そんなことあるわけないでしょ!

妄想もいい加減にしなよ!」



_親密になって、いつの
間にかどうにかなっちゃう??


あたしが、この柳瀬クンと??




ンなことあるわけないっての!


そんなのは、もう――……。





……混乱しかけてた
あたしの耳に、そのとき
ふいにクスクスッて笑い
声が聞こえてきた。




ハッとして見ると、今まで
黙ってやり取りを眺めてた
柳瀬クンが、唇に手を
当てて小さく笑ってる。



_「―――え? な、なに??」




彼が何を笑ってるのか
わかんなくて、ためらい
つつも尋ねると、




「イヤ……ごめんなさい。

なんか松嶋センパイの
反応がおもしろくて」




柳瀬クンは必死で笑いを
噛み殺しつつ、そう言った。




(はあ? おもしろい!?

こっちはおもしろくも
なんともないわよーっ!)




_心の中でだけ文句を言う
あたしに、柳瀬クンは重ねて、




「松嶋センパイって、
けっこうかわいいんだ♪」




プーさんの蜜壺に入ってる
ハチミツがとろける
みたいな笑顔で、そんな
ことを言う――……。




「なっ………!」




『何バカなこと言ってんの!』
って怒鳴ろうとした声を、
後輩達の叫び声がかき消した。



_「かわいいだって!

ヤダー、莉央さんいきなり
告られてるしぃ!」




「あ〜ん柳瀬クン、答えを
出すのはまだ早過ぎよぉ!

ここには他にも女のコ
いっぱいいるからぁっ!」




「え? あ、いや、別に
オレそんなつもりで
言ったんじゃ……」




柳瀬クンにとっては予想
外の反響だったみたいで、
ポカンとした顔してたけど……。



_――今さら遅いわよ、バカ。




この女ばかりの部署で、
キミみたいなコの一挙手
一投足は、どんだけでも
注目集めちゃうんだから。




それに――フェイントで
『かわいい』なんて
言うんじゃないわよ。




しかも、あんな笑顔で言うから。





――思わずあたしも、
ドキッとしちゃった
じゃない――…。




_


「あーもー、みんなうるさい!!

マジでこの話終わり!

早くしないと休憩終わるよっ!!」





金切り声に近い声で
あたしが叫んで、ようやく
その場の騒ぎはおさまった。




後輩達はメイク直しがまだ
だったのを思い出して、
『あ、ホントだ、時間ヤバッ』
とか言い出す。




あたしも憮然とした顔で
お弁当箱を片付けながら、



「……柳瀬クンも。

何かすることあるなら
1時までにね。

午後からは、他部署の
挨拶まわりするから」



_そう言うと、柳瀬クンは
一瞬の間のあと、
『あ、ハイ。わかりました』
って頷く。





まったく……ホント、
お騒がせな新人クン。




「それじゃ、また後でね」




あたしは彼の顔も見ないで
そう言うと、自分もメイク
直しに行くために、
席を立った――。





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