小さな小さな冬の妖精が背を丸めて泣いているのが見えた。
しゃくり、しゃくり、と静かに近寄ってみる。
泣き声の主は、どうやらこの冬の妖精らしい。
トナカイは、この妖精はさっき家の前に立っていた冬の妖精だということを知った。
「どうしたんだい?」
「うぐっ……ひっく……」
「……そうだ、きみ……」
トナカイが袋の中からプレゼントを取り出した。
にこにこと冬の妖精にそれを渡した。
目を腫(は)らして真っ赤になってしまった妖精の顔。
トナカイを不安気に見上げている。
冬の妖精が恐る恐るプレゼントを受け取ると、トナカイは言ったのだった。
「泣かないで。大丈夫。そろそろクリスマスだし、いいことがあるよ」
「ちが……ちがうん、です……」
「え?」
俯(うつむ)いてしまった冬の妖精が呟(つぶや)いている。
何を呟いているのか分からなかったので耳を傾けてみる。すると。
「…………ごめん、なさい…………」
「どういうこと?」
「あたし、トナカイさんのビスケット、食べちゃった…………」
「そんなこと」
トナカイは冬の妖精の頭を撫でた。
白い銀髪がさらさらと流れていく。冬の妖精は恥ずかしそうだった。



