何度も深呼吸をして気持ちを落ち着けて、しずの反応が無くてちょっと不安になってきた頃。
しずがようやく口を開いた。
「…わかれって」
さっきのあたしと同じぐらい寂しそうな声だった。
「何、が?」
「だっから、あーもう!恥ずかしかったんだよっ」
首をひねってしずの方を見ようとしたけれど、しずがあたしを抱きしめる腕の力を強めたから振り向くことができなかった。
ごめんね、鈍くて。
「それに、噂になったりしたらかなが困るだろ、とかいうのは言い訳だけどさ。
初めて会ったときだって…ほんとは俺、かなのこと知ってたし、名前で呼ぶのだってめちゃくちゃ苦労したし…」
もごもごつぶやくしずがたまらなく愛しくなって、あたしはしずの背中にそっと手を回してささやいた。
「…帰ろっか。
好きだよ、しず」


