「しずはクラスのヒーローで、あたしは地味なだけの女子なんだよ。
なんか…《みんなのしず》をあたしだけが独占するのって、どうなのかな」
「なんだそりゃ」
あたしが必死で口にした考えを、しずはその一言で振り払ってしまった。
何よ、しずにわかってもらえるようにかんばって言葉にしたのに。
むっつりと唇を尖らせるあたしに、しずが語気を強める。
「俺は!…かなが地味だなんて思ったことないし、みんなのものになった覚えもない。
こんな、情けない奴だよ」
「でもあたし、しずと友達でいる間もずっと寂しかったよ。だって学校に着いたら、しずはもうあたしに話しかけてくれなくなるから」
今まで思っていたことを告白すると、ずいぶん気持ちが軽くなった。
そうか、あたしは今までしずにこう言いたかったのか。
しずが片手で頭を掻きながら、あたしの肩に顔をうずめる。
その重みと温もりが、心地よくてくすぐったい。


