alternativeⅡ

国連軍の武装を無断で持ち出し、命令にない行動をとって、同胞である人間を虐殺する。

しかし蒼真に科せられた罰は、武装の無断使用と命令違反による懲罰房行きのみ。

北アイルランド人類解放同盟のメンバーを殺害した事に関する罪は問われなかった。

それどころか、蒼真は曹長から少尉に昇進さえした。

何故なら北アイルランド人類解放同盟は、完全抗体保有者を利用する者として国連軍に対しても敵対行動を続けていたからである。

国連軍にとってもまた、彼らは敵。

敵を駆逐した事に対する罪は問われなかったのである。

…その事が、ますます蒼真の中の闇を色濃くした。

人殺しをしても断罪される事のない世界。

罪なき妹が無惨に辱められた挙句殺される世界。

AOKとの命の取り合いが延々と続く世界。

この世界では、命があまりにもぞんざいに扱われすぎる。

そんな世界で、俺は一体何を信用すればいいのか。

人間も、AOKも、自分自身も信用できない…。

…『双剣の神』は堕ちた。

己の為だけに刃を振るう孤高の破壊神へと、その姿を変えたのである…。