alternativeⅡ

『北アイルランド人類解放同盟』は、完全抗体保有者を『穢れた血を持つ者』と呼んだ。

純粋なる人間ではなく、完全抗体保有者はAOKとの混血児であるという説を打ち立て、それをまことしやかに一般市民に語って、敵対感情を煽り立てたのだ。

当然遺伝子調査を行った訳でもない、ただの憶測によるデマだ。

だが、人々はAOKを畏怖し、その結果完全抗体保有者をも同一のものとして見るようになり、恐怖と嫌悪の視線を向けるようになった。

そして悲劇は起こる。

…その日、自宅に帰った蒼真を待っていたのは、無惨に犯され、血塗れの姿にされて壁に磔にされた妹の真生の亡骸だった。

まるで咎を受けたイエス・キリストのように十字の形に磔にされた真生。

壁には彼女の血で文字が刻まれていた。

『穢れた血は断罪されるべきである。粛清によって浄化されるべきである』

真生が完全抗体保有者の証である『青紙』による徴兵召集令状を受け取った。

殺された理由など、そんな些細でくだらないものに過ぎなかった。