alternativeⅡ

『完全抗体保有者はAOKに近しい者』

この時代、そんな根も葉もない噂が流布する時期があった。

AOKの分泌物を受けても、何の拒否反応も示さない特異体質の持ち主、完全抗体保有者。

その体質は普通の人間から見れば、嫉妬と奇異の対象でもあった。

毒物を打たれても死なない体なのだ。

もしかしたら完全抗体保有者とは、人間ではなくAOK寄りの生物ではないのか。

誰かがそんな発想を口にする。

そこから偏見と誤解による差別は始まった。

誇張を孕んだ噂は噂を呼び、極端な弾圧へと発展する。

『化け物の毒を浴びても死なない奴もまた化け物』

『完全抗体保有者はどんどん前線に送って、化け物同士で殺し合わせればいい』

己より優れている者、己の理解できぬ存在。

そういったものに対する人間の偏見というものは、時に残酷で非道なものへと変わる事がある。

その最たるものが、イギリスに存在した反完全抗体保有者団体『北アイルランド人類解放同盟』だった。