alternativeⅡ

蒼真のその言葉を境に、会議室に残った者達の空気は、戦争続行へと流れていく。

たとえAOKが臆病ゆえに行った過剰防衛だとしても…仲間の命が奪われたのだ。

親が、兄弟が、親友が、恋人が。

無辜の民が、その臆病ゆえの殺意の犠牲となったのだ。

やられたらやり返す、復讐の果てに生まれるものなど新たなる悲劇と憎悪のみ。

ならばその綺麗事を、近しい者を失った者の目の前で語れるのか。

それが、戦時下という時代。

真実が戯言となり、人間の理性が詭弁と罵られる狂った世界。

「悲しいな…」

兵士達の昂ぶる戦意と殺意を見つめながら、ディック・グローレン少将は小さく呟く。

「最早止められぬのだな…この戦争も…人の狂気も…」

まるで蒼真の心の奥底深くに宿る闇が、全ての兵士に伝播したかのような光景だった…。