ドイツ。

「ぅきゅうっ!?」

同僚のGSG-9の隊員にぺチンと尻を叩かれ、シオンは素っ頓狂な声を上げる。

「もう!ハインリッヒ隊員セクハラですよ!」

「悪い悪い、シオンはついからかいたくなってな」

にこやかに笑うハインリッヒ隊員。

シオンはこのGSG-9でもマスコット的存在だ。

あの最終作戦で、人類を滅亡の危機から救った英雄とは思えない。

『セントエルモの死神』と呼ばれた非情な戦士の顔を見せなくなって久しい。

そう、もう見せない。

見せる事などないのだ。

だって、世界はこんなにも希望に満ちている。

死神が顔を覗かせる必要もないほど、世界は光り輝く未来に導かれている。

私達が導いたのだから。

この手で、この力で。