alternativeⅡ

夕陽が、瓦礫の基地施設を朱に染める。

国連軍モスクワ管区。

世界でもトップクラスの軍備を誇っていたこの基地も、1983年の喀什遭遇戦以降侵攻してきたAOK群によって酷い有り様だ。

基地が壊滅しなかっただけマシだと思うべきか。

森野 妃(しんの きさき)はマグカップのコーヒーを一口飲んで、窓の外の寒風吹き荒ぶ景色を眺めていた。

机の上には資料が山積みにされている。

全てAOKに関するデータだ。

分泌物の毒性、再生力の数値、運動能力の個体差。

地球飛来時には全く未知の生命体であったAOKを、彼女は一から調査した。

敵を知り、己を知れば百戦危うからず。

昔の人は上手い事言ったものだと思う反面、百戦危うからずは大袈裟だとも思う。

それでもデータを蓄積する事で、AOK大戦終結への糸口を掴めると、今でも妃は疑う事はない。