俺と千往の間の1メートルが堪らなく愛しいと感じていること。 千往が誰かに向ける笑顔が俺には苦しいこと。 この感情の名前は何? 俺は知ってる。 気付いてる。 「ありとくん」 涼しげで、やわらかな声音。 振り返る横顔。長いまつげ。たれ目がちな目もと。 千往の全て。 ばかみたいだとは自覚してる。不毛で、建設的ではないこともわかる。 俺にとって、千往は特別だ。 「ありとっ…、」 耐え切れず弾けたように聞こえる俺を呼ぶ声。 身体ごと振り返った千往の姿。 ………千往は、ふるえていた。