「……お休みになりますか」


そっと、布団を引き上げられる。

その手をつかんで、胸の傷の上に載せる。


「眠るまで、こうしていて」

「……貴女が望むのなら」


大きな手の体温が、包帯やガーゼを超えて傷口に染み込んでくる。


「あのときのお嬢様も、こんな感じだったのでしょうね……」


あの時――先ほどの夢を思い出す。

きっと同じ時を追憶しているのだろう。

恵理夜は、更に薄れる意識の中で春樹の首に腕をまわしていた。

恵理夜の無意識の行動に、困惑する春樹。

だが、そっと耳元で、囁かれた。


「……私も、手放しませんよ。恵理夜様」


だが、恵理夜にはもう答えられる意識はない。

けれど、胸に重ねた春樹の手に自分の指が絡められるのがわかった。

そして、ベッドと背中の隙間に腕が差し込まれる。より、身体が密着した。

きつく抱きしめられ、穴の開いた胸が軋むように痛んだ。けれど、暖かい痛みだった。

あまりに暖かくて、幸せな痛みだったので恵理夜は夢だと思った。

身体全てを委ねることのできる、心地よい体温を夢と感じながら、恵理夜は完全に意識を手放した。