風に揺蕩う物語

本心で言っているのであろう。セリウスのこの言葉にはある種の説得力みたいなものがあった。

この狂人が…。

口には出さなかったがロイスはそう感じ得なかった。理解しがたい存在。しかも今の言葉をこの麗しい女性の口から出たかと思うとどうにも信じがたい。

「セリウス将軍はそれで良い。それでこそ私も戦場をそなたに任せられる」

「ならばなぜ私をこの地に呼び戻した王よ。私に執行人をさせる訳でもなく、この様な高みの見物をさせる事になんの意味がある」

セリウスはヴェルハルトを王と呼んだ。どうやらすでに先を見据えて会話をしているようだ。その言動には国王が崩御したという事実を何の躊躇いもなく受け入れているように感じる。

「副将の一人として欲しいと言ってたのを思い出してな。私なりの温情だ」

「それは昔の話だ…もう興味が失せた」

「失せた…か。少なくとも来る前までは興味があったという口ぶりだな」

「ヒューゴ・シャオシールは武だけを見れば底が知れぬ男だったからな…今は見る影もないが」

生気の抜けた表情をし、ただの薄汚れた罪人と化したかつての英雄候補が今はこの様。所詮はそこまでの男だった…。

セリウスはヒューゴの能力を買っていたからこそ、このファルロースまで足を運んだに違いなかった。セリウスはいくら王族の命令だろうと、それを拒否するだけの気概は持っている。

遠路この場所に来たからには何かしらの理由があった。

それは紛れもなくヒューゴの事を気にかけていた事を意味した。

「忘れ物を取りに戻ったという事か?」

「品定めに来たのだ。不良品に興味はない…廃棄して構わん」

「随分な言われ様ですな。それではヒューゴ・シャオシールが可哀そうだ」

2人の会話に入る隙間を見つけたロイスだったが、途端に二人は黙りこみ、ロイスの顔を凝視する。何かを勘繰っている様に。