「遥を泣かせるのも、笑顔に出来るのも、朱希だけだ」
一馬くんから、昨日よりも優しく切なく抱きしめられた。
「俺がどんなに頑張ってもアイツが現れたら最後。一瞬で奪われんだよ」
「そ…んなことない。あたしは、一馬くんにドキドキしてた…」
「それは一時的なモンで、またすぐ朱希に戻る」
耳元で聞こえる一馬くんの声が弱々しくて、余計に涙が溢れ出す。
「だから、朱希のことしか考えられない遥は、俺の彼女じゃない」
「あたしのこと…き、嫌いになったんじゃなくて?」
「……嫌いになれたらどれだけ嬉しいことか」
あたしは結局、一馬くんを苦しめちゃってたんだ。
それからしばらく、一馬くんの腕の中で泣き続けた。何に対してでもなく、ただ泣いた。
そして、あたしが落ち着き始めた頃、一馬くんが口を開いた。
「俺、意地悪だからさ、ちょっと遥に意地悪していい?」
「は…はひ!?」

