「前に、お前が落とした教科書を拾ったらありがとう、ってお前の笑顔を見せられたって言っただろ?そん時、思ったんだ」
横顔でも口元が上がってるのがわかるよ、一馬くん。
「一目惚れってやつ、あるんだなって」
「……大袈裟だよ」
「同時に、コイツをこんなに笑顔にさせられる奴はどんな奴だろうって思った」
気がつくと、○×公園に着いていた。瀬川くんと別れた場所だ。
「遥と同じクラスになってからは振り向いてほしくて、たくさんちょっかい出した」
「本当だよっ。一馬くんいつも意地悪するだもん」
「バーカ。本当に意地悪なのは、お前だろ?」
え?
「まだ朱希のことが好きなくせに俺と付き合うとか言うなよ」
天気は晴れているのに少し肌寒い風が吹き、あたしの心をすり抜けた。
「お前の心には朱希がいる」
「違うよっ。あたしは一馬くんしかいない!」
「じゃあ何で、いつもアイツしか見てねーんだよ」

