「親父働き過ぎなんだよ。少しは休まないといけねーのに。かと言って、俺は働けねーけどさ」
「一馬くん…」
「俺って何もできねーよ」
「ううん。一馬くんはトシさんを元気にしるよ!だって一馬くんの姿を見た瞬間、笑顔だったよ」
トシさんは一馬くんのたった1人のお父さんで、たった1人の家族だ。
トシさんにとってもたった1人の可愛い息子で、かけがえのない宝物のはず。
「……悔しい」
「え?」
「お前がこんなに嬉しいことを言ってくれて、抱きしめたいくらいなのに、お前が彼女じゃないことが…悔しい」
一馬くんからストレートにきた言葉。そして、痛いくらいの真剣な眼差しを受けて足が動かない。
『真剣なツラして言われたんだ』
トシさんの言葉が浮かぶ。あの時もこんなに真剣な表情だったの?
「……ま、仕方ねーよな」
一馬くんは小さく笑い、視線を逸らした。途端に鎖が外れたように身動きがとれた。

