あ。一馬くんの耳が赤いや。やだ…あたしまで恥ずかしくなってきちゃった。
「遥ちゃん…だったかな?」
「あ、は…はいっ」
照れ隠しをするように一馬くんが台所へ向かうと、一馬くんのお父さんに話しかけられた。
「挨拶が遅れましたが、一馬の父の俊幸(トシユキ)です。今日は…お騒がせしてすみませんね」
「い、いえっ、大丈夫ですよ!ビックリしちゃいましたけど」
「それにしても一馬が女のコを連れてくるなんて、よっぽど遥ちゃんが大切なんだろうな!」
ふふっと目尻を下げて笑う一馬くんのお父さん。優しい笑顔が胸を温めた。
「あ。一馬の進路を後押ししたのも遥ちゃんかな?」
「へ?……あっ…少しアドバイスしただけです」
「体育祭の日だったかな?今日みたいに勢いよく玄関のドアを開けて、『俺、S大に行きたい』って真剣なツラして言われたんだ」
確か打ち上げの時に、お父さんと話せたって言ってた。
「何かあったのか?って聞いたら『大事な奴に背中押されて、親父にS大に行きたい本音をぶつけたくなった』って」
「…親父、その話もういいから」

