それは数秒の出来事だった。
瀬川くんに引き寄せられて耳元で言われた。そして、少しだけ優しく抱き締められた。
「じゃあ、また学校でな!」
瀬川くんは、いつもと変わらない笑顔を残してあたしに背を向けていった。
「う、うぅ…」
マフラーから大好きな瀬川くんの匂いが漂う。触れば触るほど温かい香り。
涙が止まらなければ、気持ちのセーブも効かない。
「……せ、が…わくん」
泣いたって瀬川くんの名前を呼んだって、瀬川くんはもうあたしの彼氏じゃない。
わかってたよ。瀬川くんの重荷だったってことくらい。
わかってたよ。瀬川くんに嫌われちゃったことくらい。
わかってたよ。瀬川くんと一緒にいてもすぐに気まずくなっちゃうって。
それでも好きだったから、ずっと瀬川くんの傍にいたかった。
瀬川くんの彼女でいたかった。

