「……なぁ、浅井」
自分の足元を見ながら、あたしに問いかけた瀬川くん。口元は黒のマフラーに隠れていた。
「……俺、距離置こうって言ったけど…やっぱりダメだ」
「え?」
「いっぱい考えたけど、答えはいつも同じところに辿り着いた」
すると、足元からあたしへと瀬川くんの視線が移動した。あたしの背筋は自然と伸びる。
「………俺たち、別れよっか」
「え……」
切なく笑いながらあたしを見る瀬川くん。そんな瀬川くんの目から目を離せなかった。
「やっぱりダメなんだよ。俺じゃ浅井を笑顔にしてあげられない」
「………」
「いつも、無理させちゃうだけなんだよ」
あたしは、言葉が出なかった。ううん、頭もついていかなかった。
瀬川くん、何言ってるの?
─────別れるって……え?

