「ごめん、遥」
一馬くんがスッとあたしから体を離した。恥ずかしくなって俯いてしまった。
「だけど、俺…本気だから」
「え?」
「遥のことマジだから、それだけは覚えてて」
両手で顔を包まれ、一馬くんの真剣な目があたしな心をとらえた。
「……帰るか。遅くなったし、家まで送る」
頷くことはしなかった。だけど、足は一馬くんについていった。
それからの出来事はよく覚えていない。一馬くんの顔は上手く見れなかったことは確か。
頭の中は一馬くんからの告白と、さっき見た瀬川くんの表情が忘れられない。覚えていたのはあたしの家を去る前に、
「遥と朱希を応援してたけど、これからは応援出来ない…から」
と一馬くんが呟いた。あたしは何も言えなかった。ただ『送ってくれてありがとう』とだけ言った。

