信じられない、という驚きを隠せずにこちらを見ている瀬川くん。
どうしよう。何も言えない、言いたいのに…言えないよ。動けない自分を悔いている時だった。
「瀬川先輩ーっ。どうかしましたか?」
エナメルカバンを背負った、ショートカットの女のコが瀬川くんに近寄った。
「あ…いや。うん…何でもない」
「そうですか?じゃあ早く行きましょうよっ。みんな待ってますよ♪」
「……あ、あぁ」
その女のコに腕を引かれながら、あたしの前から姿を消した瀬川くん。
「………あっ」
だけど瀬川くんは、最後の最後まであたし達2人のことを見つめていた。
「………遥、どうした?」
「あ…ううん、何もない…」
どうしよう。瀬川くんを追いかけたい。だけど…今のあたしに瀬川くんを追いかける資格があるの?
それに、瀬川くんはショートカットの女のコといた。

