『深呼吸して明日は挑めよ?』
「う…ん、わかった。ありが…」
───────え?
月から徐々に下に目線を下ろしお礼を言っていた時、家の前に人影があることに気づいた。
ケータイ電話を片手にして背を向けているが、あの姿は間違いなく……
「ねぇ…せ、瀬川くん…」
『あ、もしかしてバレた?』
「ち…ちょっと待ってて!」
あたしはケータイを繋いだまま、慌てて外に出た。
「な…なんでいるのっ?」
『あーもう……カッコわりぃ』
目の前にいるのに、電話越しで話すあたし達。
『せっかく、浅井に会わないで帰るところだったのに、気づかれるとか…ダサいんだけど』
「ううんっ。全然ダサくない!あたし、嬉しいもんっ」
『そっか。緊張…ちょっとは解れたか?』
「へ?あ、うんっ」
緊張はすっかり解れていた。

