するとあたしの心臓を活発にさせる瀬川くんが教室に入ってきた。あたしは小さく会釈する。
「…って朱希、なんで濡れてんだよ?」
「あぁ聞いてくれよ。雨降ってなくて朝練で外走ってたら、雨降ってきて濡れたんだよっ」
本当だ。髪からポタポタと透明な滴が流れてる。って…そのままにしてたら風邪引いちゃう。
「せ、せ…瀬川くん」
「ん?」
「タ…タオルを…」
あたしは鞄に入っていたタオルをサッと取り出し、おずおずと瀬川くんへ差し出した。
「いや…いいよ、浅井」
だけど、瀬川くんは困った顔をしていた。…やっちゃった。瀬川くんを困らせちゃっ…
「いいから使いなよ、瀬川くん」
「え?で…でも」
「遥はポケットハンカチ持参してるから心配ないよ。ね、遥」
麻衣がウインクをしてあたしを見た。麻衣のフォローにコクコク頷く。

