李漢は椿の表情を窺った。
ここ最近、椿が自分を見て浮かない表情をする原因には、見当がついていた。
椿は気づいているのだ。
聡い子だから直接尋ねてくることこそないが、腹の中では憤りを感じているのだろう。

「椿?飯食わんのか?俺が貰うぞ?」

声をかければ、椿ははっとした様子で麦飯をかきこむ。

「具合が悪いわけじゃないよな?調子悪いんなら言えよ?」
「大丈夫です」

 さっさと厨へ立って行ってしまった椿の背中を見送りつつ、李漢はため息をついた。
このままではだめだと思いつつ、ずるずるとこの生活を続けてしまっている。
 椿に訊きたいことも、訊かなければならないことも、山のようにある。
その時が来ているのだろうと、李漢は陰鬱な気持ちに駆られた。

     * 

 畑に出ると、かすかに雪の匂いのまじった風が、椿の髪を揺らした。
空を見上げると、寒々とした灰色の空が広がっていた。
冬が来るのだ。
家畜のシャマ(崖で生活する毛の長い大型の山羊の一種)も積雪に備えて冬毛を蓄え、椿がここへ来たころには青々と茂っていた夏草もすっかり枯れ果ててしまったいる。
 気持ちを沈ませる冬の気配に浸りながら、椿が細い畦道を歩いていると、目の前に小さな人影が現れた。
背中にたくさんの芋を入れた手編みの籠を背負っている。

「ツバキ!」

シュナはにこにこと椿によって来た。

「芋を洗いに行くの?」
「うん。ツバキも行こう、手伝ってくれ」

椿はシュナについて歩き始めた。