「それじゃ、俺も帰りますね」 「静香!!」 「……冗談ですよ」 シュウは、思いきり頬を膨らませながら、ベッドに横たわる彼女の顔を覗き込む。 「このアパルトマンに、こんな女住んでいないはずなんだけどなあ」 「…これから引っ越してくる予定なんじゃないですか?確か、シュウの向いの部屋は空いていた筈でしょう」 「うげ。まじでか」 こじんまりとした5階建のアパルトマンには、ワンフロア2部屋。 管理人である薫子さん個人が、直接部屋を貸しているため、住人のなかには随分とワケアリな人間もいるようだ。