・・・うん。
こう思い返してみると、これ悲劇じゃなくて喜劇だな。
俺からしてみれば、すっげえ悲劇だけど。
シノノメ ソーヤがいるだけで、一気にコメディになる。

シノノメ ソーヤに心の底からの想いを伝えた俺は。
すっきりした顔でそう結論付けた。

「言いたいことは、それだけかい?」
静かに奴は言った。
「まだ言っていいのか?」
「・・・・・・いや、いいんだ。人は窮地に陥ると、訳の分からないことを言い出すものだからね」
・・・・・・・・・つまり、自分は馬鹿じゃねえと言いたいんだな。
一度収まりかけた怒りが、再びこみ上げてくる。

「まあ、いい。とりあえず、ここがどこだか分るもんはねぇか?」
その無駄に整った顔をぶん殴りたいのをなんとか堪えて。
低い声で唸るようにシノノメ ソーヤに聞いた。
「さあ?僕らの住んでいた街じゃないのは確かだね」
「それは俺にも分かるんだよ。自慢じゃねえが、俺はあの街から出たことがねぇ。の、代わりと言っちゃなんだが、俺はあの街の景色は全部記憶してるつもりだ」
「ほお、それは素晴らしい特技だ。どんなに平凡で愚鈍な人間にも、神様は突出した才能を一つは与えてくださるようだね」
にっこり。
音が出るくらい。
それはもうスバラシイ笑顔で即座に返してくださった。

もしかしなくても、怒ってます?

さすがに馬鹿って言われたのがムカついたのか。
黒い笑顔が怖い。
でも、これで一つ分かった。

・・・・・・シノノメ ソーヤは腹黒い。

これからはなるべく怒らせないようにしよう。うん。
ま、絶対的に。
奴が俺を怒らせるほうのことが多いんだろうけど、ね。