―――――通行人B


主人公が何かに巻き込まれたとき、
普通に驚き呆気にとられる通行人(A)や、
何も気付かずに通り過ぎる通行人(C)と違い、
気付いて、驚いても、何もなかったことにする通行人のこと。

通行人の中で、一番事なかれ主義かつ平和主義。
ちゃっかりとした、世渡り上手な人間。
それが、この俺だったのだが――――・・・。




なんで、こんなことに?
頬に、何かが流れた。
意識しなくても、口元が引きつる。
「ん~。ここ、どこだろうね」
俺の隣で、99・9%元凶である奴が暢気な声を上げた。
色素の薄いサラサラの髪に、日本人離れした顔立ち。
着ている服は、青い学校のジャージの俺と違い。
お金持の、お金持による、お金持のための私学校の制服。
同じ世界の住人とは思えない、友人でもない奴に。
俺は軽い殺意を覚えた。

「誰のせいだと思ってんだよ・・・・・・」
見渡す限りの草原は。
俺が生まれてこの方十八年間住んでいた土地には在り得ないもの。
「そんなこと言ってもね、僕にも何が何だか分からないんだ」
シノノメ ソーヤと名乗ったその男は、気障な仕種で肩をすくめた。
「それに、どうして君は僕のせいだと言い張るんだい?他人のせいにしないとやっていけない現代っ子。ああ本当に遺憾なものだね」
何でこいつの言動はこうも芝居じみているのか。
ふつふつと腹の底から怒りがこみ上げる。

ほお、お前はそーゆうことを言う?
いっとくが、俺はお前と何の係わりも無かったはずなんだぞ?

色々と言いたいことはあるが。
とりあえず俺は、それらを簡潔な一言に纏めた。

「お前はッ 馬鹿だ――――――――――っ!」