体育祭を堺に、ワカメと沙綾の距離はぐっと近づいたように感じる。

ワカメは以前にも増して沙綾を構うようになり。

沙綾の方も、ワカメを信頼しているように見える。


「意識飛んでんぞ」


その声と同時に、教室の自分の席でぼんやりしていたあたしの視界が少し揺れた。


「麗ちゃん、なんでぶつの!?」


麗ちゃんがあたしの頭を小突いたんだ。


「スキンシップ、取ってやってんだよ」


寂しがり屋のポチ公に、と麗ちゃんは付け足す。

あたしはそれを聞いて少しむくれる。


「次の数学の課題、見せて」

「やってる訳ないじゃん」


あたしがしれっと答えると、麗ちゃんはわざと蔑むみたいにあたしを見た。