沙綾がこっそりとあたしに耳打ちする。


「友達って、男の子だったの?」


そうだ。
ずっと女子校育ちの沙綾には、男友達が居ない。

そして沙綾の性格上、恵のように騒がしい男は超苦手分野。

あたしは不安そうな沙綾の肩に、ぽんと手を置いた。


「大丈夫。悪い奴じゃないし、万が一沙綾を傷つけたりなんかしたらあたしが懲らしめるから。ね?」


にっこりと笑いかけると、沙綾は納得したようで、怖ず怖ずと頷いた。

それを見てあたしは沙綾の背中を押し、恵の方を向かせた。


「城崎沙綾。あたしの親友なんだから、優しくしてよね」


恵は「当然!」と、にんまりと笑った。