冬恋。

海さんに告白されて1週間、東に振られて1週間。
告白と、失恋で私の気持ちがごちゃごちゃしている最近。
今日は莉央と千尋と遊ぶ予定、だったはずなのですが……。

数分前。
現地集合!!ということで一人で電車に揺られていた頃にメールが届く。

メールを確認すると莉央からで、家の用事で来れなくなったとのこと。
電話も着ていて、莉央からかなと思って確認したら千尋。

電源を切っていたからか気づかず、駅についてから急いで架けなおす。

『あ、ゆあ?』

千尋は以外とすぐに電話に出た。

「どうしたの?」
『ごめーん!今日いけなくなった』

はいぃぃぃ!?
まさか千尋までとは……。

私ってもしかしてついてない……?

「千尋も?莉央もなんだよね」
『まじで?!』

まじに決まってますって。嘘ついてどうなる……。

「まじ。私もう駅なんだけど……どうしよっかな」
『がんばれ』

がんばれなんて言われても……。
ここまでの230円と時間返せよーッ!!

「うぅ。分かったから電話切るねー。また明日」
『ほんとごめんね!またね!」

千尋、理由も話さないなんて、さては内緒で彼氏でも作ったか……。

駅から一人で歩き出す。
せっかくここまで来たから、何か買い物でもしようかと少しずつ歩き出した。

外は思った以上に寒く、息は真っ白。
温かい飲み物を買おうと、近くの自動販売機へと向かう。

「くっそ……なんでお金入らないん……」

自動販売機の前に、一人ジュースが買えずに苦戦している人がいた。
何回も100円玉を入れてはおつりの所から受け取り、それを何度も繰り返している。

その自動販売機、お金入れるコツがあるんだよね。

「もうぅ、何なのこれ」

……海さん?
どっかで聞いたことのある声だと思ったけど……本当に海さん?

「海さん……」

ボソっと呟いてみた。

「え……??」

くるっと、私のほうに向きを変える。

「ゆあじゃん!!なんでいるの!!」

やっぱり海さんだった───!?

「やっぱり海さんじゃないですか!!こっちが聞きたいの!」

ついつい大きな声が出てしまう。

「いや、これ……お金がなかなか入らなくてジュースが買えないわけじゃないよ?」
「買えないんですか?自動販売機で?ジュースが?簡単なのに?」

あえて『お金を入れるときにコツがあるんですよ』とは言わず。
ちょっと海さんをからかってみた。

「だって……買えないんだもん……」

かわいい……!!
うつむいて照れる海さん。

「海さん、その自動販売機なんですけど」
「な、なに?」
「お金入れるコツがあるんですよ」

親切に教える。

親切なのかどうかは知らないけど、海さんをからかった後だから、ね。

「まじで!!」
「まじです」

そう言って、自分の財布からお金を出し、自動販売機にお金を入れる。

「おお、ちゃんと入ってる!」

海さんはなぜだか感動している。
よっぽど苦戦していたのだろうか。

「海さん、何買うんですか?」
「僕?コーヒーでも買おうかとね」

コーヒーか……。なんだか大人って感じする。

「あ、でも自分で買うから……」

海さんの言葉が言い終わる前に、コーヒーのボタンを押す。

「どーぞ。海さんのことからかっちゃったんでお礼に」

120円ぐらい……。海さんには色々お世話になってるし。

「えぇ、いいよ!!」
「私コーヒーだめなんで。海さんにあげます」

コーヒーだけは飲めない私。

「分かった、ありがと……っ」
「はい!」

海さんは、私の手からコーヒーを受け取る。
受け取ってくれたことが、なぜかうれしかった。

「じゃあさ」
「はい」
「代わりに、何かおごるよ」

おごりとか……!!そんな、彼氏でもない人にそんなこと!

「そういうのって、彼女にやるものじゃ?」
「僕、ゆあにしか興味ないし。言ったでしょ?ゆあのこと好きって」
「もう、海さん恥ずかしいです……」

ハタから見れば、バカップルである。
実際違うんだけど……。

「じゃあ、ここ周辺よく知らないから案内してもらっていい?」
「はーい!喜んで」

そう言うと海さんは手を差し伸べてくる。

「え……?」
「お手をどうぞ、お嬢様。なんてな」
「海さん……!!」

恥ずかしい……、どうして海さんこういうことが出来るの。

「僕こういうキャラじゃないよ、行こう。ゆあ」
「はい!」

手をつなぎながら歩く私達。

「あ、ゆあ!!クレープある!食べようよ」

見た目はかっこよくて大人っぽいのに、食べ物のことになると子供っぽくなる。

「食べますか?」
「食べる!!めっちゃ美味しそうじゃん」

目を輝かせる海さん。

「えーっと、じゃあ僕いちごクレープ!」
「あ、あたしもそれで」

オーダーを受け、クレープを目の前で作る店員さん。

「ありがとうございました」

作ったばっかりのクレープを受け取る2人。

「ゆあ、そこのベンチで食べよ」
「うん!」

ベンチまで移動し、座って一緒に食べる。

「いただきまーす!」
「めっちゃ美味しいですね!海さん」
「ねー」

以外といつも通りの私達。
カップル……というより、兄妹にも見えるかもしれない。

「あ、ゆあ」
「何ですか?」

海さんが、私の顔を見てくる。

なんか恥ずかしい。

「クリームついてるんだけど」
「え……」

クリーム、どこについてるの!?
食べるの早かったかな……。

「とってあげる」
「え、ちょ」

ちょっと待ってくださいよ、という前に海さんは私の顔についてるクリームをとる。

「はい、取れた」

そういいながらクリームをなめる海さん。

「何してるんですか海さん……!恥ずかしいですよ」

鏡を見なくても分かるぐらい、私の顔が真っ赤なのが分かる。

「だめだった?」
「そういうのは、彼カノがやるものでですね……っ」
「じゃ、今日は一日彼カノごっこやらない?」

……えっ。
つまり、海さんの彼女をやるってこと!?
今日一日だけ、海さんの彼女……。

「海さんがいいなら……」
「僕がいやがるとでも?自分で誘っておいてそれはないよ」

海さん……。

「分かりました!今日一日、海さんの彼女やります」

自分で言っておいて恥ずかしい。
なんか、私が告白してるみたいじゃん……。

「ありがとう、ゆあ。」

そう、私の顔を真っ直ぐな目で見てくる。
何故かさっきの海さんの真っ直ぐな顔は私の印象に残った。

「ん、クレープ食べ終わったから行こうか」
「行きますっ」

そして、再び手を繋いで歩き出す私と海さん。

「こっちのほうがいいかな」

そう言って恋人繋ぎにしてくる海さん。
私と海さんの指を絡める。

「海さん……っ!!」
「ん?嫌だったら離すよ」

そんなことを言いながらも手はしっかり握りながら話す。

「いやなわけないです」

私がそう答えると、にこっと二人で笑い、歩き出した。

「海さん海さん!!ゲーセン行きませんか!」
「行こうか」

適当に街を歩いていると、ゲーセンがあった。
目を輝かせる私、それに笑う海さん。

「わぁ、このぬいぐるみかわいい」

ゲーセンに入ったその瞬間にかわいいぬいぐるみのUFOキャッチャーを見つける。

「取ってやる」

小さなバックから財布を出し、100円を入れる。
少しずつクレーンが動く。

「おっしゃいけえええ!!」

しかし、海さんの声に意味はなく何もつかんでないクレーンだけが戻ってくる。

「もう一回!」

再び100円を入れチャレンジするが、何もつかんでないクレーンしか戻ってこない。

「ゆあ!!100円かして!」
「……!?」

挙句の果てには私から100円をかりる始末だ。

「これで最後だぁぁぁ!!」

しかしスカる。

「ばっかじゃねーの!!」
「いいじゃんか!」

……あっ!
両手で自分の口を押さえる。何海さんにタメ口使ってるんだ。

「ごめんなさい!!つい素が」
「ゆあも普通の子だよ!いいじゃないか。ずっとキャラ作るの疲れるだろ?ゆあはゆあらしく、ね。僕も素で答えちゃったしね……」

キャラか……。
そういえば今までずっと自分のキャラ作ってきた気がする。

東と付き合ってた時もずっと笑顔作ってた。
嫌われないように……って、ずっと頑張ってた。けど海さんは……。

「海さん、これから素でいいですか……?」
「いいよ!」

クレーンゲームの景品はもらえなかったけど、いい言葉は海さんからもらえたよね……。
って、私何気いいこと思った!

「うっしゃゆあ!!後100円!」
「お金の無駄遣いです」

それ言うな!っていう感じで私をバシバシ叩いてくる。

「痛いですう!!」

「あ、海さん。プリクラ!!」
「……プリクラ!?」

驚く海さん。

私としては、友達と遊びに来たらプリクラ撮るのが当たり前だからなぁ。

「プリクラなんて、ずっと撮ってない」

ツッコミそこですか!
普通、女の子とのプリクラって嫌がるものじゃ……。

やっぱり海さんって面白くて好きだなぁ、もちろん友達として。
お兄さんみたいな存在として。

「そうなんですか!」
「また後で……」

遠慮がちに言う海さんを無理やりプリクラ機の中につれていく。
海さんの表情、コロコロ変わって見てると面白い。

「えええ!!」
「いきますよ!海さん笑って」
「はい……っ」

ぎこちなく笑う海さん。
いつも見ない表情が妙に面白い。

「いきなり撮らせるんだもん……、絶対写り悪いわ……」
「かわいいからいいんだよ!」

ストン
プリクラが印刷されて出て来た。
確かに海さんちょっとだけ笑顔が固め……、でもこれはこれで……!

「やっぱり写り悪い……、次撮るときは頑張ろう」

次、という言葉に私は驚いた。
半ば強制的にプリクラ一緒に撮らせたのに、次……。
海さん、また一緒にプリクラ撮ってくれるのかな。

「いい思い出になったと思います、また撮りましょうね!」
「うん。そのときまでには惚れさせてあげるよ」

海さんの言葉に、ちょっと赤面した私がいた。

「もう、海さん……!!」