その日の放課後


屋上前の階段につくなり、大輔くんは私の手を握る。




「古文のとき犬っちとひっついて何の話してたん?」
 



ちょっと拗ねたような顔で私の顔をのぞき込む大輔くんに、驚く。

やっぱり見てたんだ…




「ってごめん…俺うざいな」

「ううん、そんなことないよ!あのね、大輔くんの動画見せてもらってたの」

「俺の動画?」



私はうんうん頷く。



「私が最近、大輔くんと離れて落ち込んでたから…犬山くんが元気付けるために動画を撮ってくれたみたいで…」


「あー…そういえばなんか昨日の練習ん時、犬っちスマホで撮ってたかも」


「うんそれそれ。大輔くんがバク転してるの見たよ!すごく格好良かったよ」



今思い出しても、ちょっと興奮してしまう。

私の話を聞いた大輔くんは、少し照れたような困った顔をしてから、うなだれるようにうつむく。



「そっか、そうやったんや」

「うん」

「うーーん…でも…わがまま言うて良い?」



大輔くんはつないだ手をキュッと握り直す。




「優が元気なかったんは俺のせいやから、俺がこんなん言う資格ないんかもやけど……優を元気付ける役目は俺がしたい」


「え…?」


「俺以外のやつに励まされて、優の赤くなる顔とかみせんといて欲しい…」