手の中の蝶々



そうだ。
分かった。


「私、先生が嫌いなの…!」

涙の理由はきっと、これ。

「先生が嫌いだから、こんな事されて嫌で嫌で泣いてるの……!」
それ以外に考えられない。

しかし、そんな強い意志とは裏腹に、声は震え、涙は止まる事なく。
言葉に説得力はない。

そう、どうにも嫌いな人に嫌がらせを受けている状況にはなりえないのだ。


『ふふ、面白い事言うんだね。蝶々さんは』


嫌い、と言われて笑っている。

それは私の説得力の無い言葉のせいなのか、先生がMなのか。


『だって…こんなに震えながら"嫌い"って言われても、意地をはってるようにしか見えない』

ツー…と首を撫でられ、ピクッと肩が動く。



『波内さんに、ヤキモチやいているんでしょう?』

「………っ!」



何処かで、言われた事のある台詞。

「違……っ!」

『違わないよ。
だって君は今、教室から飛び出した自分を追い掛けて来た僕を、嬉しく思ってる。そうだよね?』


首を撫でていた手は、唇に触れていて。


『"そうです"って、ほら、この唇動かしてみなよ』


触れられた所に、全神経が集まってるんじゃないかと思ってしまう。

ピリピリと、痺れる。