手の中の蝶々



そしていつも通り時間をずらして家を出て…。


私と先生は、なんの変哲もない担任教師と生徒になる。


教壇に立つ今日の先生の頭に角は生えていない。
だから勿論波内さんの世話になる必要だってない。

だから私はあの、嫌な気持ちにならないで済む。


…そう思っていたのに。


『先生…?しゃがんで下さい』

へ…………?


私、直したよ?
だってほら、ないじゃん。


『あー、はい』


先生も分かってるじゃない。
ついさっきの朝の事、忘れるなんてあり得ない。


イライライラ



なんで、しゃがんじゃうのさ。

波内さんも、何がしたいの?



先生に触れるのは、寝癖を直すのが目的じゃない、よこしまな理由?


「むかつく」


私は見てられなくて、席から立ち上がる。


だからなんでムカついちゃうのよ。


―――『それってヤキモチなんじゃない?』



五月蝿い五月蝿い五月蝿い。

そんなんじゃ、ないもん。


ことごとく現れる託さんの幻影を振り払うように、私は廊下をズンズン歩く。


もうすぐ授業が始まるとか知ったこっちゃない。


何より、淡いピンクが咲き誇るあの場から早く立ち去りたかった。