手の中の蝶々



ドアを押し開けたその先、見えたのは先生の満面の笑みで。


私は視線を下に反らして、ドアノブを持つ手に力が入る。


『蝶々ーさーん、僕のお帰りだよっ』

ニコニコ笑う先生はそう言いながらも家に入るつもりはないらしく。


どうしても私にアノ言葉を言わせたいらしい。



「…んぐぐ………」


私は歯をグイ、と食い縛る。


練習したのに…!
全く実戦にうつせない。



「おかっ、おか…っ!」


『おかかですかぁ?僕おにぎりは鮭派なんです』


聞いてない!
誰も聞いてない情報を伝えてくる先生。

楽しんでるんだろうなぁ……


しみじみ思う事じゃないけど。



「…言わなきゃ駄目?」


私は先生を見上げる。


だって…、普通にお帰りなさいだけでいいじゃない!


『……このまま遊ぶのもいいけど、ご飯食べたいので……言わせますっ!』


何で気合い入っちゃってんの!
しかも遊ぶって…!


『言えない?』


「い、言えるから……!ち、ちょっと待って……!」