手の中の蝶々



完全に目が慣れて、全体がよく見えた。



仰向けの先生のお腹あたりに跨る私…
その手は下から先生に両手首を握られていて。




『まさか夂葉さんから襲われるだなんて…!』


……は?


『先生心の準備が…っ』


は?は?はぁ!?


「転けただけだもん!!」


しかも、私は今すぐ退きたい。
この体制から逃れたい。
なのにそれを阻止しているのは先生の方だ。
私の両手首を掴んで、放そうとしない。




『放せ変人』

「先生に対してなんて暴言っ!」

「放してくださいませ、変な御方」


『言い方を整えたって無駄!』



プンプン、って……
先生、キツいよ。




…それにしても、なんて色気のない。

女子高生とその担任が、夜、男の部屋で真っ暗な中危なげな体制でいるのに、2人は言い合ってばかりで。




「私が蝶々なら先生は変な御方ってことで」


『何それ…!蝶々さん酷い!』




だって、冗談擬いに言っておかないと、誤った雰囲気になってしまいそうで。


出来るだけ先生かこの口調、トーン、テンションで話していてくれますように。



祈る私の脳裡には、先生の低温ボイスばかりが、かいま聞こえる。