手の中の蝶々




チクタク、と時計の音が聞こえる。




静か……。




『夂葉さん』


「ん?」


そこで先生が私の名前を呼ぶ。


静かな中の先生の声はより心地よくて。


私はシャーペンを滑らす手を止め、先生を見る。



仕事机に座っていた先生は、私の座るこたつに入ってきて、私を見る。


「な、何…?」


妙な雰囲気に、また何か変なことをいいだすんではいかと、警戒してみせる。



『夂葉さんは蝶々みたいだね』


「………?」


変なことと言えば変なことだが、予想外の変なことで、私の思考回路まで変にこんがらがり、絡まる。



『ふふ、蝶々さんだ』



…そう言えば。
あのメモ!



「私が、蝶々?」


『はい!蝶々さん』



夂葉さんです。
蝶々さんじゃないんだけどな。


「蝶々みたいって…?」


『夂葉さんは蝶々みたいだからっ』



やっと伝えられたことが嬉しいのか、終始嬉しそうな先生はもう私の理解力では到底たどり着けない。



「蝶々か……」


なんだかもう考えるのも面倒で。


私は取り敢えず先生の言う事実の言葉だけを理解することにした。