手の中の蝶々




『夂葉さん、先お風呂入ってきて?』


「……」


『どうしたの?』


「いや……えっと」




先食べおわった私に、先生が言う。


その様子に私は一瞬止まってしまった。



だって、だって…っ



「"夂葉さん"……」


『ん?駄目?』



ナチュラルに桜木さんから夂葉さんに変化を遂げたことに、戸惑いを隠せなかった。



「駄目じゃなくて、その……い、いい。それで」


なんだか恥ずかしくなってしまう。


これしきのことだが、私には未体験ゾーンなのだ。




「……じゃあお先に入るねっ」




私は食べおわって空になった食器を、台所に持っていって、お風呂へ向かった。