手の中の蝶々




先生は気持ちを持ち上げるのが上手い。



『桜木さんの良さを皆さんにも分かっていただきたいんです!』


「ありがとうございます…」



でも、私には勇気がない。
今さら出来上がっているグループに突っ込む度胸はない。




拒絶されたらどうしよう






結局私はそれが怖いんだ。




イメージの中では簡単に出来ることが、実際の私はイメージとは異なって。




きっと声をかけることが出来なくて、教室に1人立ちすくんだまま楽しそうなクラスメイトを見つめるだけ。





『僕が口を出して上手くいくほど高校生の人間関係は単純ではないですよね?』


「…多分」


先生が〇〇ちゃんと仲良くしてあげてね、なんて手助けをして、その子に気遣いなく仲良くなれるのは、凄く小さい子くらいのはず。

もしかしたらそんな小さい子達だって、〇〇ちゃんの事情を探ってしまうかもしれない。





『でも取り敢えず今は僕との信頼を深めましょう!!あ、敬語いらないですよ?』



「へ?あ、じゃあ私も」




私が暗い思考になっていってるのを感付いてか、話を少し違った方向に持っていった先生。




…そして思わぬ瞬間に、敬語消滅。