手の中の蝶々



『そういえば桜木さん、お昼はどうしてるんです?』


「え、あ……パンで済ましてます」


『……誰かと一緒に…?』





……やっぱり先生にはバレてた。
先生は疑問系で私に言ったけど、本当は確信があるんだ。



「1人で……」


そう、私は友達と呼べる友達がいない。
噂が何処から出発してどういうルートを辿って巡るのかは知らないけど、いつの間にか私の家庭状況は校内に広まっていて。


…かと言ってそれを友達がいない理由にするわけではない。

私と同じ状況でだって友達がいる子はいる。

だから、私の場合、この取っ付きにくい性格が、私の家庭状況と交ざりあって、私と皆との間に壁をつくったんだろう。




「仕方ないんです。私学校で無愛想だから」


何故か、こうなっていた。
無愛想で無関心。そんな私に皆も無関心になる。
それでいいんだ。

どうせ女子高生らしい遊びをする柄でもないし金銭的に余裕があるわけでもない。



…そう、自分では思っていたのに


『僕は、話してみると表情が可愛らしいと思いましたけどね』


スプーンを片手に、私を見てニッコリ笑う先生。


『皆さんは桜木さんのことを知らないだけです、こんなに美味しいカレーが作れることだって』


そして美味しそうにカレーを頬張る先生。


「………」


『…褒められて恥ずかしそうに俯く桜木さんも、とても無愛想なんかじゃありません』