手の中の蝶々



カレーが先生の口に運ばれる。


『あ』


「え?もしかして甘口ダメでした??」


途端に声を漏らす先生に、不安になる。


『いえ、ダメと言うわけではありませんが……どちらかと言えば辛口が好きですねぇ。

……でも甘口も久しぶりに食べると美味しいですねっ』


あ、辛口だったんだ…
やってしまった……



「何か別の作ましょうか…?」


『いえ、本当に美味しいですよ。

…桜木さんは甘口が好きなんですか?』


会話をしながらもカレーを口にする先生は、無理して食べてる様子はなく、私の心配は無用のようだ。



「はい、好きです…」


そんな私は、実は甘口派。
辛いのは、舌がピリピリして苦手。
だって、痛いもん。



『それならこれから僕も甘口でいいです』


「へ?…私辛口頑張りますよ?」

食の趣味まであわせてもらっては申し訳ない。



間をとって中辛という手もある。



先生が無理する必要はないのに。




『僕も今日で甘口の魅力を感じました』


「…いいんですか?」


『はい、なんだか甘いのが病みつきになりそうです』





カレーの話……だよね、これ。