手の中の蝶々



先生が言った“私が知らなかった先生”は、





……馬鹿だった。





家ではそれに拍車かかかるらしく、エプロンがどうとか言ってるけど。









『わー、もう一気に喋らないで下さい!ホームルーム始めますからね!』




『先生もっと真剣に怒らなきゃーっ』



なんて、生徒に馬鹿にされる始末。



でも、馬鹿にされたって



『先生!古典の模試点数上がった!!』


『先生ーっ、彼女がさぁ――』



皆が、先生を好きなのが見てて分かる。



なんやかんや好かれてるのだ。





すっごく、もんっのすごい、変人だけど。




今日1日、今までとは違う見方で先生を見てきたけど、先生は教師で、教壇に立ってものを言う立場で、大袈裟に言っていいのなら、住む世界が違うのだ。



段差が、ある。





目に見えるものでも、見えないものでも。




さて私はそれを登ってしまっていいものか。








「あ、今日スーパー行こ」


そんなの分かるはずないけど、私が出来るのは……、家事で。




先生が喜ぶ、お嫁さん、になりきること。