『良かったね』




先生のこの言葉を聞いた瞬間、


もう涙が出る気はしなくなった。



先生が言ってる意味も分かるし、正しいのも分かる。
私は戻るべきなんだ。

分かってるんだけど、先生はそれでいいんだ、って。
ほんの少し住んだだけ。
ほんの少し秘密を共有しただけ。

だけど、だけど、先生は私に改革をもたらした。
クラスに馴染めだしたのも初めて。
自分に関係ない筈の事であんなにイライラしたのも初めて。


それに、度重なるドキドキに、気付かないフリをしていたけど、本当はもう気付いてるんだ。


でも、それはあってはならない事。

「…うん、お世話になりました」

だから笑顔の仮面を貼りつけて、本音がもれてしまわないように包み隠すんだ。


先生は正しい。
私だって正しい。

誰も間違ってない。


だから、傷つくのは間違ってる。


この胸の痛みは、きっと間違いなんだ。