分からない。


だって、そんな、急に言われても。


私は先生が嫌いで………!



―――『それってヤキモチじゃないの?』


「――…っ!」


必死に唱えるものの、託さんの言葉が蘇る。


もう…!


頭がぐっちゃぐちゃだ。


『さっさと認めたら楽になるよ』
「……!」


上から見下す先生が、にこやかに言う。

でも、そんな、"吐いちまったら楽になるぜ奥さん"的な…


「分かんないもん…!」

本当に、分からない。

自分の、気持ちが。


『此処、ドキドキするでしょ?』

そっと胸を指差す先生。


「何処触って…!」

『意識しちゃうんだね』


当たり前だ!
男の人にそんなとこ触られて平然としていられる程私は図太くない。


『ドキドキするのが、証拠だよ』



胸は私を激しく押し上げる。


この高鳴りが証明するのは、先生の言った通りの理由なのだろうか。


「本当に分かんないの…!」


訳が分からなくなって泣き出しそうになる私を見て、先生は優しく笑って、



スッと離れた。


そして私に背を向けて考えるように眼鏡を弄ったかと思えば、急にこちらを振り返って。


『じゃあゆっくり分からせるとしようか』


満面の笑みは、何故か怪しく弧を描いて。

眼鏡の向こうの瞳は力強くギラつく。



『それまでは僕でいてあげる事にするよ』


意味不明な事を言い………


『じゃあエプロンよろしく!』



何事もなかったかのように、いつもの先生に戻った。