「頭下げたくらいで許してもらえる問題じゃねぇのかもしれない。けど俺……」

「幸田、もう昨日のことはいいからさ」

「え……」

「昨日はたしかに、落ち込んだ。けど、私も過去ばかり見てる自分とはさよならしなきゃなって思ってるし。私も昨日は言いすぎた……のかも」




不思議……


幸田のこと、前よりも優しい気持ちで見れるようになってる。





「けどさデートは……その、諦めるよ」


「ねぇ幸田、奇跡って信じる?」


「ハ?」



幸田は私の質問に驚きながらも、真剣に考えている様子だった。



「信じるかもしんねぇ」


「そっか。だったら幸田にも奇跡、起こるかもね」



ニコっと笑ったあと、スキップしながらミナミをつれて教室を出た。


私もね、奇跡信じるよ。


だから、昨日リョウともう一度会えたこと。


私の心の中だけでは、夢じゃなくて本当にあった出来事だと思っていてもいいのかな。




「今の意味深っぽい言葉と笑みは何?どういうこと??」

「ふふっ」

「え、杏里もしかして?」




2人だけでは、ちょっと抵抗があるけど。


ミナミと、他校のミナミの彼氏と、私と幸田で遊べばいいかなと思った。


まぁ


幸田がオッケーしてくれるかどうかは分からないけど。


ミナミたちはオッケーしてくれた。


ただ、私がクリスマスイブを幸田と過ごすと決めたことに驚いている様子だった。



「私も、前進していかなきゃね。一気には無理だと思うけど、少しずつでも進めたら良いなと思う」


「そっか。うん。そだね。でもさ……ねぇ杏里、なんかあったの?」


「……うん、あった」


「ええっ?!な、なにが?」



屋上で風に吹かれながらミナミと話し、私は昨日リョウが握ってくれた手のひらを見つめた。



「クリスマスの、奇跡……かな」


「はぁ、何それ?」



ミナミは呆気にとられていた。


私は、晴れ渡った空を見上げた。


そして大きく深呼吸をしたんだ。


キミに届きますようにと、願いながら。