「斗真、お姉ちゃんに“よろしくどうぞ”って頭を下げなさい」
この子、斗真君っていうんだ。
“リョウ”じゃなかったことに、何故かガックリとしていた。
私が斗真君を見ていると、斗真君は照れたのかおじいちゃんの後ろに隠れてしまった。
「コレ、コレ斗真。お姉ちゃんに挨拶しなさい」
おじいちゃんの言葉は斗真君には伝わらず、斗真くんは私に顔を見せようとしなかった。
「ごめんねぇ、この子ちぃと恥ずかしがり屋なんよ。男ならもっと勇ましくならんといけんのんじゃがのぉ」
苦笑するおじいちゃんに、私は微笑を返した。
その時、家の中から若い女の人が出てきた。
「お父さん、良かった。これ忘れ物」
「おぉ……」
「あら、どうもおはようございます」
きっと斗真君のお母さんでおじいちゃんの娘さんだ、と思った。
私は「はじめまして」と、頭を下げた。
おじいちゃんが、女の人に私のことを紹介した。
「まぁ、じゃあご近所さんね。うち、この子がいて4人家族だから、結構騒がしいかもしれないけど。よろしくね」
“騒がしい”……か。
リョウ一家が住んでいた時も4人家族で結構騒がしかったから、何だか懐かしい響きだな。
リョウと、リョウのお兄さんと、お母さんと、お父さん。
いつも笑顔が溢れてる家庭だった。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
私は笑顔で言った。