そしてこの家でいちばん小さな部屋。



「蜜のプライベートルーム」

「狭い。なんで紫の部屋はあんなに広いのにあたしのはこんなに狭いの!?」

「まず、お前が勉強してる姿を見たことがない。で、ケンカして引きこもってもすぐ出たくなるこの窮屈感。さらに、自分の部屋なんか持ったら俺との接触が減るから」



とにかくあたしに与えられたのは机と本棚があるだけの狭い部屋。



紫の抜かりなさにイラッとした。



「キッチンにはある程度揃ってるけど、蜜が使うわけじゃねぇからな」

「マジで使用人さん雇ったの?」

「ヒマな時には話し相手にもなってくれんじゃねぇか?」



ひとつ上のヴァンパイアだって話し。



期待してよ~。



「俺も若干忙しくなるから。あんまり心配させんなよ?」

「あたし基本いい子だし」

「へぇ~…」

「ムカつく、紫のくせに」

「じゃ、カギ渡しとく。少しずつ引っ越して来い」

「うん」



まだ住むのは先。



少しずつ、引っ越します。