俺が畳に足を着けたと同時に、俺の身の周りを纏っていた『風』が止んだ。唖然となる俺に、不適に笑う天狗様。

「な…何なんだ一体! 俺の身体どうなってんだよ!?」

 身体を奮わせ言えば、親父が静かに口を開いた。

「風の術者として完全に目覚めたんだ。お前は『風』を自由に扱い、それを武器に魑魅魍魎や妖怪と闘うんだ」
「風の…術者?」

 じゃ、じゃあ何か!?
 俺以外にも●●の術者とかって人種がこの世の中にはうじゃうじゃ沢山居るってことか!?

「うじゃうじゃ沢山はおらぬがな?」
「俺の心を読むんじゃねぇ!」
「仕方あるまい。わしは主の中でこれから住まい共有するのじゃから」

 お、俺の中に住む!?

「親父! 俺、そんな話し知らねぇぞ!?」
「落ち着け、悠斗。さっきも話しただろう、共有すると。天狗様とその身を共有して行くのが、我が家の務めだとな」

 じょ…冗談じゃねぇ!!

 何が哀しくてコイツと俺の身体を共有しなければならないんだ。コイツが俺の身体に入るということは!!

「ふむ、朝も昼も夜も一緒と言うことじゃな」

 天狗様が、さも楽しそうに笑顔で答えた。また俺の心を読んだらしい。
 心を読まれるのは真っ平ごめんだと言えば、これから先そうも言ってられないと、天狗様は肩を揺らし笑った。

 俺がそれを知るのは暫く先の話しなのだが、今はそっとしてくれと部屋に閉じ篭るのだった。