俺と術者が何か関係あるのか?
 首を捻る俺に、親父が話しを続けた。

「我が鳴海家は、長男が二十歳になると同時に、代々受け継がれている術者としての力を手に入れる。術者となり、天狗を守護神にこの世に蔓延る魑魅魍魎や悪さをする妖怪を始末して行かなければならない」
「はぁー!? 意味分かんねぇ!!」

 目を丸くし、俺が親父に言えば親父は苦笑しながら俺を見た。いきなり、魑魅魍魎や妖怪退治をしろと言われても、意味が分からない話しである。
 ア然とする俺と親父の前に、羽を羽ばたせながら天狗様が降り立った。じろりと俺を見る天狗様の頬には、返り血なのだろうか赤く染まっている。

「主がわしの新しい主(あるじ)になる者だ。英司と違い少し頭が足りぬようだが、主は選べんからのう、仕方あるまい」

 手の甲で血を拭いながら言う天狗様に、俺は怒りを覚えると、俺よりも遥かに高い胸倉を掴み噛み付いた。

「俺だってアンタに守護して貰えとか、意味分からねぇし!」
「主は元気だけが取り柄か?」

 胸倉を掴む俺の手を天狗様が軽く取ると、俺の身体が宙に浮きそのまま畳に叩き付けられそうになった。危ないと思うと同時に、俺は強く目を閉じた。

「ほう、お主は『風』の術者か」

 天狗様が呟き俺は目を開けると、自身の周りに纏わり付く小さな竜巻のような物に、身を護られていた。
 畳に叩き付けられるどころか、ふわりと身体が浮き上がり、ゆっくりと畳に足を着ける。