「―…全く、最近の術者は弱いのぉ」

 目覚めた俺の目の前には漆黒の羽を広げた背を向けた天狗様がいた。空中で胡座を掻きながら、ため息をついている。

「…鴉、天狗」

 呟いた俺に気付くと、ゆっくりと俺の隣に降りて来た。俺と目を合わせると、不適に笑い天狗の面を装着する。

「主が聞きたいことは何だ?」

 天狗の面を着けたまま俺に問えば、俺はゆっくりと思っていることを口にした。

「何で、俺はアンタが見えるんだ?」
「主が力を継承したからだ」
「―…力って、何だ?」
「主が…しっ、静かに!」

 静かにと言われ黙る俺の耳に、ビシッピシッとラップ音みたいな音が聞こえ、部屋の窓ががたがたと揺れている。

「な、何だ!? 地し…ぶっ!」

 地震かと起き上がろうとした俺に、事もあろうか天狗様が枕を投げ付け黙れと言う。一体、何なのか分からないが、継承者にする態度ではないだろう!?

 黙り暫くすると、がたがた揺れていた窓はしんと静まり、ラップ音も消えていた。枕を手に俺は何があったんだと天狗様を見れば、天狗様は何も言わず窓から飛び立った。

「一体、何なんだ!?」

 部屋に残された俺は意味が分からず窓から外を覗いた。窓の外の景色は何も変わっていない。
 あれは一体何だったのだろうと思いながら、親父がいるであろう本堂へと向かい歩いて行くことにした。